「だけど、本当に梓ちゃんは外を知らないね。詰まんなくないの?」


千崎が悪気が無さそうな目で、私を見遣る。


「外を知らないわけじゃないの。外に出ないの」


くるりと千崎に背を向けて、砂浜に歩き出す。


「外に出ない?もしかして、緑さんに出してもらえないとか」

「勿論よ。出れるのは、要の家に行く時と、仕事に付き合うときくら・・・・・・」


ぐにゅり。

私の踏み出した右足が、なにか柔らかい、得体の知れないものを踏んだ。


「ひっ、?!」


右足を勢いよく引き上げる。

途端に、バランスを崩した左足が、滑った。


体が水面に落ちる。

水飛沫が立って、私は見事海で転んだ。



「・・・・何してるの、梓ちゃん」

「・・・・な、なにか、踏んで・・・・・・・、」


冷たい目で見下ろしてくる千崎に、私が転んだ水中を指差した。

水面に手を突っ込む千崎。


「梓ちゃん、これ、ワカメ。」


千崎がずるりと緑色の物体を引き上げた。