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息をのむ。

裏腹に高鳴る胸をおさえて、私は一歩足を踏み出した。


嫌いであるやつに手を取られ、緊張しながら進む。


「今梓ちゃん、ご機嫌でしょう」

「・・・・・・・そんな訳がない・・・・・・」


目の前に居る、千崎は秀麗な顔を緩ませて、私に笑いかける。


心地いい香りが鼻を擽った。



「海、なんて初めてでしょ?」


目の前に広がる、広大な景色。


ここは、東京から少し離れた海岸。

裸足になって、砂浜をゆっくりと歩きながら、初めての“海”を感じた。


千崎が自らの運転で、ここに連れてきてくれたのだ。