□ □ □
息をのむ。
裏腹に高鳴る胸をおさえて、私は一歩足を踏み出した。
嫌いであるやつに手を取られ、緊張しながら進む。
「今梓ちゃん、ご機嫌でしょう」
「・・・・・・・そんな訳がない・・・・・・」
目の前に居る、千崎は秀麗な顔を緩ませて、私に笑いかける。
心地いい香りが鼻を擽った。
「海、なんて初めてでしょ?」
目の前に広がる、広大な景色。
ここは、東京から少し離れた海岸。
裸足になって、砂浜をゆっくりと歩きながら、初めての“海”を感じた。
千崎が自らの運転で、ここに連れてきてくれたのだ。
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