「そうでなくっちゃ。今日、本城くんは居ないわけ?」

「仕事よ。あんたみたいにふらふらしてないで、ちゃんとしてるんだから」

「聞こえが悪いなぁ。こう見えて、仕事帰りだよ」


まぁ、見て分かるけども。

内心そう思いながら、私は立ち上がろうとした。


と思ったところ、またもや腕を引かれ、私の体は千崎の膝の上に落ちた。



「・・・・・・あぁもう、鬱陶しい!今度は何?」

「ねぇ、一緒に遊ぼうよ」


耳を疑った。


「はぁ?」

「だから、一緒に遊ぼうよ」


目の前に居る、千崎蒼人は、世界有数の化粧品メーカーの大財閥の後継者、のはず。


そんな偉い人が、ここまでふらふら来て、“遊ぼう”なんてぬかすだろうか。


「本城君だけがきみの隣に居るなんて、ずるいでしょう?
もしかしたら今日で、きみは俺の事を好きになるかもしれないのに」

「そんな訳、・・・・・・」


千崎は一方的に、立ち上がった。


「じゃあ、行こうか、梓ちゃん」


つられて立ち上がった私の顔は、無意識に怪訝そうになる。

千崎は私を引っ張りながら、満面の笑みで、部屋を後にした。