閉じていた瞳を開ける。
殺風景な部屋は真っ暗で、時計の針の音だけが静かに聞こえた。
窓から漏れる、都会の轟音がひしめく。
「梓」
音も無く近付いた声に驚くことは無く、私は顔を上げた。
「父さんが、倒れたそうだね」
暗闇に映る、愛しい人の姿。
固定電話を見ながら、ネクタイを緩めて、少し疲れた顔を私に向けている。
「・・・・色々厄介なことが重なるなぁ」
番号を見て、顔をしかめながら、要は留守電を再生する。
耳に入る、憎たらしい音声。
「・・・・・・・・かなめ・・・・・・」
「うん、大丈夫だよ」
要は優しい笑顔を、私に向ける。
心が温かくなった。
「もうすぐ、終わるから・・・・・・・」
要の低い声色と、大きい手の平に頬擦りをして、私はまた目を閉じた。