『梓に会ったから、変われたんだ』
『・・・・・わたし?』
不意に名前を呼ばれ、間の抜けた声を出してしまう。
『人生に絶望してたんだ。だけど、きみが首を絞められてる所を見て、自分の中の何かが壊れたんだ。
突き放されて、床に這い蹲って、それでもひたむきに前を見て、必死に壁を越えようとするきみを見て、変われる気がしたんだ』
赤黒くなった血液が、だらりと傷口からあふれ出た。
まるで、これが最後とでも言うように。
『毎日顔を合わせるたびに罵られて、精神を抉られるくらいの屈辱を味わってきた。
何回、死のうと思ったか。
縦社会の僻みに耐えられない毎日、媚諂う人間に呆れる人生。
僕と同じ年齢の子は、外に出て遊びまわっているというのに。何で、自分は外に出れないのだろう。
こんな気持ちは、きっと誰にも理解されない、そう思ってた』
まるで、私の奥深くに隠していた本心を、要が読み上げるみたいだった。