『憎悪。嫌悪。殺されるくらい妬ましい視線を、焼かれるんじゃないか、っていうくらい向けられるんだ』


要がうつむく。

手首よりも、心が痛い。



『本城家に入れられた時から、地獄だった。

毎日毎日毎日勉強だし、外には出してもらえないし、楽しい事なんて、一つも無かった。


どうでも良いようなことを作業のように覚えて、役に立たない知識を詰め込んで、疑問に思いながらも、それを忠実にこなす。

まるで自分は何かの機械じゃないかって思ったよ』


顔を上げた。

要も、私と一緒の事を考えていたんだ。



『・・・・梓と、同じ考えに辿りついたんだ。


兄には侮辱され、両親にはより高いところを求められて、自分を押しつぶす。

そんな人生を、自分で終わらしてやろうかって』


要が私の手首を離した。

掴んだ要の指の痕がくっきりと痣になっていて、こびり付いた血が固まっていた。