知識において、行動力において、知能において、思考力において、判断力において。

全て、要の方が、お兄さんより優れていたのだ。


所詮、血の繋がらない赤の他人な訳だから、一方的に要は恨まれていたんだ。


弟の癖に。

そんなお兄さんからの陰険な視線を、今までずっと、要は耐えてた。


その全ての恨みは、本城家の夫妻に向けるはずなのに。

全ての始まりは、養子を二人も取った、夫妻の強欲さからなのに。


要は、今でもずっと、後悔の淵に立たされているんだ。


お兄さんへの同情、伸し上がってしまった罪悪感、執念に耐え切れない心。


そんな、不安定な状況で、要は生きてきたんだ。


私が知らない間と、私が知っている間、ずっと。



留守電が入ったランプが点灯する。

消去ボタンを押そうかと思ったけど、手を止めた。


要の義父が入院した。

それだけは、要に伝えたい事実なんだ。

お兄さんの音声が入っているからって、勝手に消すことはできない。



私はベッドに座り込み、体を倒した。

深い溜め息をついて、真っ白な天井を見上げる。


窓から、自動車や人間が動き回る音が微かに聞こえる。

ぼーっとしながら、私はまた目を閉じた。