『良いご身分だな、社長さん。これで父さんが消えれば、お前は目の上のたんこぶが無くなるもんだ。お前になってみたいよ』
電話の向こうで、嘲笑うかのような、馬鹿にしたような声が零れる。
思わず、拳を握り締めた。
『おまえの化けの皮が剥がれることを願うよ』
ぶつり。
そこで、電話は切られた。
すぐに流れる留守電音声。
“ルスデンガ イッケン アリマス”
ピー。
機械音に、はっとした。
この音声を、消した方がいいのか。
要にとって、“悪”にあたる人からの、僻みの残る音声なんて、いっそのこと無かったことにしようか。
忘れもしない、この声。
この声は、要のお兄さんの声だ。