「それじゃ、行ってくるね」
「もう行くの?」
要は少し笑って、私の頭に手を置いた。
「うん、急ぎだから」
宥めるみたいに、要は私の頭を撫でる。
「・・・・・・無理しないでね」
「ありがとう」
私に背を向けて、要は部屋を出て行った。
途端に静まり返る部屋。
そうだ、要は凛堂家に気に入られるように、毎日毎日頑張っているんだ。
邪魔はできない。
要の努力があったから、私たちは結婚を認める事が許されたんだ。
結局、邪魔は入ったけれど。
凛堂家をより力強い資産家にするために、凛堂家は、力が強い家柄を取り込んでいかないといけない。
だから、要は凛堂家に見合う、“本城家”を作りあげているんだ。
たとえ、“本城家”がどんな仕組みであろうと。