『要、きっと結婚なんてできないよ』
『どうして?』
『だって私は、要と会ったらいけないんだって』
要の掌が、ナイフを握る私の手ごと、包み込む。
要の体温がじんわりと伝わった。
『要は、ずっと隠してた。要は、私が思ってる以上に、大きい人だったんだ』
『大きい人?』
『仕事で、毎回ここに来てるんでしょう?』
ここで自殺を志願している私なんかに、貴方が釣り合うはずがない。
要は優しく笑った。
『・・・・・・きみは、まだ“僕”を知らないから、きっとそう思うだけだよ。』
『・・・・・要を、知らない・・・・・・?』
もう一度要を見上げると、今度は要は笑ってなかった。
『僕の過去を、話そうか』
要は、私よりもずっと重い、重い鎖に縛られていた。