その人物を確認して、私は更に死にたくなった。


ナイフを今度は力強く、手首に突き立てた。

痛みは、驚くほど無かった。


きっと、感覚がおかしくなって、麻痺してたんだ。



『・・・・・・梓・・・・・・・・・・、結婚しよう?』


落ち着いた、低い声が私の上から降ってくる。


私は見上げて、首を傾げて見せた。



『結婚して、僕らだけになって、それで、二人で死のう』


やんわりと、要、は私のナイフを握った。


『・・・・梓は、死にたかったんだね』


『・・・・・・・なんで?』


要は、哀しそうな笑顔で、呟くように言った。



『だって、僕がどんなにきみを笑わせようとしても、きみはどこか遠い目をするんだ。
何か欲しいものでも、遣りたい事でも、何かあったのかな?

そう思ってたんだ。

そっか、梓は死にたかったんだ』


落ち着いた要の声で、私自身も納得した。


『そうなんだ・・・・、私、死にたかったんだ・・・』


床に溜まった赤色を、客観的に眺めた。