私が九歳のとき。

丁度、凛堂の家に養子として出されてから、三年が経った。



『っ、』


頬に鋭い痛みが走った。



『貴女はいくら言っても分からない子ね。自分の立場を理解してるかしら?』


私の頬を叩いた“お母さん”は、厳しい目付きで私を見下ろす。


『・・・本城家と、凛堂家の家柄の違いを分かってるの?』


“お母さん”の顔には余裕が無い。

張り詰めた顔で、私と目線を合わせた。


『要くんに、貴女はどんな態度で接しているの?ちゃんとした言葉を使ってるかしら?』


冷たい、細い目が私をじろりと睨む。

そんな雰囲気に気圧されながら、私は小さく言った。


『・・・だってかなめ、“普通に喋っていいんだよ”って言ってくれたの・・・・』


今度は、反対側の方の頬に、痛みが走った。


『・・・・貴女まさか、要くんのこと呼び捨てで呼んでるんじゃないでしょうね・・・・』


心底怯えた顔で、“お母さん”は私を見下ろした。