目の前の机には、冷め切った牛肉と、並べられたシルバーたち。
何度もマナーを叩き込まれたせいで、これまでの食事全てが嫌いだ。
『・・・・・・・・・はぁっ、は・・・・・・・・』
もう一度椅子に座りなおして、フォークを握る。
そうだ、今晩の夕食でこの作法を出来ていないと、私は何をされるかわからない。
必死になって、叩き込まれたマナーを思い出した。
『・・・・・・ねぇ、くび・・・・・・だいじょうぶ?』
急に掛けられた声に、私は思わず握っていたフォークを落としてしまった。
『う、あ・・、・・・・・・誰・・・・・・・、?』
ひっそりと立っている、その人を見上げた。
『僕?僕は、本城要。君は?』
要、と名乗った少年は、優しく笑った。
強張った声が、自然と喉から零れる。
『凛堂・・・・・・梓、・・・・・・』
『梓、ちゃん?何で、さっきのあのおばさんに、首を絞められてたの?』
無垢な瞳が、私を見下ろす。