要を見上げて、私は思い切って言って見た。


「・・・・千崎蒼人、って知ってる?」

「せんざき、・・・・・・・あおと?」


要の表情が固まった。


「・・・・・・・千崎グループの、あの後継者?」

「知ってるの?」

「知ってるも何も、有名だよ」


要は顔を顰めた。

そして、溜め息を小さくつくと、私に笑いかけた。



「・・・・梓に一目惚れでもしたの?その千崎さんは」

「分からないわ、全くつかめない人なの。緑さんの前では“紳士”なのに、居なくなった途端に人が変わったもの」


昼の千崎を思い出した。

冷たい目が、今でも忘れられない。



「・・・・・・・うまくいかないな、」


要がソファに凭れ掛かって、ぽつりと漏らした。


「何で、こんなに邪魔者が現れるんだろうね」


要が私を見下ろしながら、小さく笑った。