内心毒付きながら、私は今度こそ方向転換する。
(・・・・・・・・“あのひと”に会いたい)
五月蝿い大人たちに捕まらないように、足早に歩く。
上質な絨毯を踏み付けながら、立派な回廊を上がる。
心臓がどきどきと高鳴った。
絡まる視線を振り払いながら、人が少ない階に立つ。
パーティ会場とは反対側の、休息用の小さな部屋が詰め込まれた階。
そこの、一番奥の豪華な扉をノックした。
「・・・・・・・・・梓です」
小さく呟くと、その扉はすぐに開いた。
「・・・・・・・・おいで」
開いた扉の隙間から、甘い匂いが零れる。
どき、と心臓が鷲掴まれる気持ちに襲われた。