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目の前の机の上には、細い湯気が立つ、上品な香りのする紅茶。

可愛い茶菓子が控えめに添えられている。


私は背筋を伸ばし、口元に柔らかい笑顔を浮かべながら、目の前の人物に微笑んだ。


目の前の人物、千崎蒼人は私に秀麗な笑顔を返してくれ、その場はほんわかと収まった。



「わざわざ来てくださり、有難う御座います、蒼人さん」

「えぇ、大変嬉しいです」


千崎蒼人に会う、それは私も分かっていた。

だけど、何故か私の隣には、どこか落ち着きの無い、緑さんが座っていたのだ。

何故、この人がここに。

出かけるんじゃなかったのか。



「先日初めて梓さんをお伺いしましたが、今見てもお綺麗ですね、眩しいくらいです」

「そんな、眩しいだなんて。勿体無いお言葉です」


歯が浮く台詞に気品良く返さなければならない。

本当なら、こんなはずじゃなかったんだ。

もっとはしたなく、下品に接する筈だったんだ。


なのに何故、緑さんが居るんだ!