これから私は、“千崎蒼人”に会わないといけない。
どうにかして、この人との婚約を駄目にしないと、私は要と一緒に居る事ができない。
絶対に、気に入られては駄目。
闘争心が燃え上がりながら、私は“お母様”と楽しい会話をしながら車に乗り込んだ。
一時間もすれば着く、馬鹿みたいに大きい屋敷。
そこが私の家。
家と言っても普通とはかけ離れてて、とても居心地が悪い。
十年経った今で、やっと慣れてきたくらいだ。
「梓、居間に蒼人さんを呼ぶつもりだから、時間になったら来なさいね」
「はい、お母様」
“お母様”は忙しそうに仕事部屋に消える。
どうやらどこかに出掛けるようだ。
好都合だ。見張られていないなら、尚更この婚約を失敗させる可能性が高くなる。
よし、頑張れ、私。