「こんばんは、お母様」
「えぇ、梓。座りなさい」
向かいのテーブルには、真っ赤なワンピースを纏った緑さん。
貴女に一番似合う色よ、と言いたくなるのを堪える。
「今日はどうなされたんですか?」
椅子に行儀良く座り、緑さんの機嫌を伺う。
今日は機嫌が良いようだ。
「えぇえぇ、貴女にとても良い話を持ってきたの」
緑さんは人当たりの良い、満面の笑みで私の隣まで歩いてきた。
鼻を擽る香水の匂いに、くしゃみが出そうになる。
「良い話、ですか?」
どうせこの人のことだ、また別荘改築とかの話だろう、きっと。
そう思っていた私の机に広げられたのは、一人の男の写真だった。
思わず首を傾げてしまう。