「十時に使用人が呼びに来るって。それまで何してる?」


要は寝転がりながら、私の顔を見上げた。

要の少し癖のついた髪を触りながら、その隣に寝転がる。



「要が居れば、何もしなくてもいい」

「うん、俺も」


チクタクと時計の秒針が嫌に部屋に響く。

要が私の手を握った。


「・・・・・・兄さん達に、会ったんだ」


どきりとした。

思わず体を起こす。


「・・・・・、そ、れで・・・・・?」


要は瞳を閉じたまま、続ける。


「・・・別に、何も無かったよ。ただ、少しの挨拶をしたくらい。」


要の黒い瞳が私を捉えた。


「人間の、“憎悪”の目は嫌いだ・・・・・」


要は私の頭を抱えると、めずらしく毒を吐くような口調で、そう吐き捨てた。