まるで自然な動作のように、私はキスをされた。
要が一秒後に目を見開く。
「・・・・・・・ちょ、」
「挨拶だよ、あいさつ。だって君たち、もうここからいなくなるんでしょ?
お別れのキスくらい、許してくれてもいいんじゃない?」
千崎が優しく要に目配せする。
要は不機嫌そうな顔で、私を自分の後ろに隠した。
「・・・・・ちぇ、まあいいや。俺の負けみたいだよ、本当。梓ちゃんを手に入れること、できなかったみたい。本城君の勝ちだね」
私が持っている花束の、バラを柔らかく撫でる千崎。
私を見て、にっこりと微笑んだ。
「お別れの、プレゼント。若いきみたちに、健闘を祈るよ」
花束のプレゼント。
何ともくさいことをする男だ。
搭乗を知らせるアナウンスが流れる。
「本城君、また今度、会えることを祈るよ」
「僕は一生会いたくないですけどね」
「うん、俺も梓ちゃんに会いたいだけ。」
千崎は笑顔を崩さないまま、要の背中を押した。
要は私の手を引いて、飛行機乗り場へと急ぐ。
千崎が見ている。
目を奪われながら、私は咄嗟に口を開いていた。