大きい空港内を、ゆっくりと歩く。
気付くと私たちの足は、乗り場まで来た。
「あと、三分。」
要が腕時計を見遣る。
あぁ、三分か。あと三分で、私は狭い都会から逃げ出すことができる。
ここから逃げたら、何をしよう。
まず、電車に乗ってみたい。それと、バスも。
ファミリーレストランにも行ってみたいし、学校がどんなものなのか知りたい。
これから始まる、私の新しい生活が楽しみで仕方無い。
「梓、ちゃん・・・・・・!!」
後ろから、急に名前を呼ぶ声がした。
びっくりして振り向くと、そこには気に食わない奴が立っていた。
「・・・・千、崎・・・・・・・?!」
珍しく疲労している様子の顔で、額に汗を浮かべている。
相変わらずのスーツの姿で、手には柄でもない大きな花束を抱えていた。
「・・・なんでここに、」
要も驚いたような顔をしている。
何で、千崎がここにいるんだ。何も伝えてないのに。
しかも、不吉な花束なんかを持って。