「今日は二人の為のパーティなんだから、沢山楽しみなさい。面倒ごとは、後で考えればいいのよ」
「ありがとうございます。じゃあ、僕達はホールに居ますね」
「えぇ、たくさん楽しんでいってね」
“お母さん”は口元に完璧な笑顔を作りながら、私たちの背中を見送っている。
最後まで、完璧な淑女を演じていた。
「よく言うわよ・・・・・・・」
「・・・・それには同感だよ、梓。これからもう一仕事ある。ホールに行って、何か一言二言喋らないと」
「えぇ、それが終わったらこのパーティもお開きのようなものね」
要の腕に抱き着いた。
勿論、はしたなく見えないように、上品に、謙虚に。
「もうすぐ、梓を自由にしてあげられるからね・・・・」
要の甘い声に意識を傾けながら、ぼんやり私は歩いた。