□ □ □
無機質なコール音が鼓膜に響く。
内心どきどきしながら、私は出るであろうその人の声に、耳を澄ませた。
窓の外を見ると、こんなにも世界は明るい。
ぼんやりとそれを眺めながら、私は隣の要を見上げる。
私しか見てない、少し螺子が狂ってる彼は、私と目が合って笑った。
「あぁ、緑さん?」
電話が繋がり、私は間髪いれずに声を掛ける。
勿論、向こうから聞こえたのは怒号。
『なにが、“緑さん”よ!“お母様”と呼べと何度いったら分かるの!
貴女はいつこちらに戻ってくるつもりなのかしら?!要さんもそちらにいるのでしょう?』
電話を少し耳から遠ざけて、要を見遣る。
要も困ったみたいに苦笑してた。
「・・・・わたしは貴女を“お母様”なんて呼ぶつもり、もう無いわ」
『何ですって?!貴女、誰のお陰でこれまで生きてこられたと思ってるの!』
空が、気持ち悪いほど青い。
これまで見上げてもいなかった空は、こんなに澄んでいたんだ。