「・・・わかる?」

「うん、分かるよ。だって梓が、いつもと違うから」


要はジャケットを脱いで、シャツのボタンを開ける。

仕草のひとつひとつが私の心臓を揺らして、どうしても申し訳ない気持ちになった。


「・・・・千崎さんと一緒に居たの?」


要がベッドに腰掛けながら、視線だけを私に向けた。


「・・うん」


やっと開いた口からは、枯れた声しか出なかった。


少し沈黙が流れて、先に口を開いたのは要だった。



「・・全部、終わった。今日、終わらせてきた。

分かるよね、どういうことか」


顔を上げる。

要は余裕そうな笑みを浮かべて、私の顎を持ち上げた。


「梓が泣いたって、叫んだって、悲しんだって、苦しんだって、何を言われても、俺は梓を一生手放す気なんて無いよ。


だって、梓は俺のものなんでしょう?」


反らされた喉から、声にならない声が漏れる。

そのまま要は、私にキスをした。