「梓ちゃんの顔、困った顔になってる」
「・・・・・は?」
「どんな顔して本城君に会えばいいだろう、って顔に書いてある」
「・・・・・・・・・・・」
千崎が車を降りようとする私の腕を掴んだ。
引き寄せられて、顔が近くなる。
「二日後にいい返事を期待してるよ」
耳元で、毒みたいに甘く囁く。
一瞬千崎の雰囲気に飲まれそうになって、堪えた。
「・・・・・・ふん」
そいつを押し返して、車から降りる。
笑顔を崩さないまま、私に手を振る千崎。
それに応えて、発進する車を見送った。
思わず、溜め息が零れる。
久しぶりに吸い込んだ外の空気をもう一度吸い込んで、私は開けっ放しにされてあった要の部屋に入った。
暗くなった視界に、安堵が零れる。