私は、要の後ろに隠れるようにして、立った。


“お母さん”の、機嫌に触れないように、無事にこれから過ごせるように。



「梓はまだ未熟な事ばかりですが、どうかよろしくお願いしますね」

「えぇ、こちらこそ。色々お世話になってばかりで、何とも言えませんが・・・」


じろじろと、無神経な視線が背中に突き刺さる。


黙って肉でも頬張ってろ、と言いたい所だけど、そこは我慢。

笑顔を貼り付けて、静かに立っている。



「本当、梓は幸せだわ、こんな素敵な人と結婚できるなんて」

「そんな、恐縮です・・・・」


吐き気がした。


本当は、金と権力さえあれば、誰だって良かった癖に。



「もう二人の家も考えているのよ?やっぱり静かな所に構えたいわよね」


ほほほ、と“お母さん”が笑う。


要もそのままの笑顔で応えた。