「だけど、本城君を色目で見る女の子を、梓ちゃん睨んだよね」

「・・・・・・・・・・・・・・」


記憶を辿る。

・・・あぁ、そんなことがあった。


「まさか、見てたの?」

「目に入ったの。ただぼーっと眺めてたら、君が女の子を睨んでるのが見えたんだ。

噛み付くみたいな、睨み殺すみたいな、そんな可愛げがない目。」

「・・・・・悪かったわね」


千崎は私を見下ろして、わざと嫌味な言い方をする。

まさか、そんな所を見られていたなんて。


「正しく言えば、興味が湧いたんだ。せっかくパーティに来たなら、楽しい思いをして帰らないとね。だから、梓ちゃんをずっと観察してた」

「観察?!」


私は思わず、ハンドルを握っている千崎を見遣った。

まさか、こんな人がそんな暇なことをしていたとは。


「気高くて、自分を持ってて、誰にも媚びないし、誰にも自分を売ろうともしない。

それで、本城君にだけは忠実なんだ。面白いと思わない?」

「えぇ、全く。」

「だから俺は、パーティが終わったらすぐに君の“お母さん”の所に行ったんだ」


現実に戻された気がした。

私をずっと縛りつけていた人の名前が挙がる。

私がこの数日間あの人から解放されて、少し浮かれてたんだ。

“お母さん”の存在を思い出して、少し気持ちを引き締める。