――どうしてこうも、邪魔が入ってしまうのだろう……





004









いつものように私は正門をくぐり抜け、教室へ向かった。そこには、黒い物体が私をどこかへ導くように点々と落ちていた。


よく見ると髪の毛だった。

しかも特有のくせっ毛のある女子のもの。


こんな陰湿的なことをするのは、私の同級以外、ないと思った。




"おはよう"


後ろから声がかけられた。声は枯れていたが、紛れもなく彼女の声だった


『おはよ…っ!?』


"う"まで言えなかった。
振り返り、あいさつをしようとしたら、バッサリと無造作に髪の毛が切られた彼女がいた


『これ…、』


何て声をかけたらいいのか、分からない。



「切られちゃった、」



はは、と笑ってみせる彼女をただ、じっと見ているしかできなかった。


『これ、だれにやられたの?』

「…、」



問い掛けたとたん、さっちゃんは顔を曇らせ、何も話さなくなった


(口止めされてるのか…、)



当時、学校一怖いと言われた男の先生と仲の良かった私は、いつもこの事を話していた。

だから、今回も言おうと思ったのだが…彼女がこんなんじゃ、意味がない



「…ねぇ、今日から少し、距離おかない?」



一瞬で頭が真っ白になった、




『え、いや。いま何て…?』

「ごめんね…、」



そう言って私を通り越して、どこかへ行ってしまった


玄関にぽつんと残された私は、そこから動けず、彼女が消えてもなお、廊下をじっと見つめたまま唖然としていた。






1人になる、ということより
あんなにひ弱な彼女は初めてみた。


小学校から知っているが、あそこまで弱まりきった姿を見るのは、今回が初めてだ。






私の心は晴れず、ずーっと曇り空のまま。
明日は きっと雨が降るだろう、
今までにない たくさんの雨が 私たちを濡らしていく――…










.