その頃、違うクラスでは違う意味でターゲットにされていた子がいた。

その子は、私と同じ悩みで文芸部に入ってきた女の子だった。

けれど、違ったのは
その子は保育園に通っていたころからのいじめっ子だったのだ。
それだけでなく、教師への態度も悪く、よく先生が目を光らせていた相手だった。


あだ名は、さっちゃん。

どこにでもいる、ごく普通の女の子で。違うのは、少し態度が大きいことと口が悪いことぐらいだ。



はじめのいじめ内容は軽いものだった。
声をかけられても無視をする。いわゆる"シカト"というやつだ。


私や部員たちは、慣れていたのでそんなのは屁でもなかった。
それに、しつこく話かけると、その相手の子たちまでターゲットに仕立て上げられてしまうのだ。
そういうことが出来ない私は、黙って皆の横をすり抜けた。
すれ違い際に、「ごめんね」と言ってくれた子もいた。

それだけで気持ちが少し軽くなった。




翌日、行ってみると、何だか隣のクラスが賑やかだった。
確認しなくても分かった。あちらこちらで笑いやボールのバウンドする音が聞こえていたからだ。



ターゲットにされていたのは、紛れもなくあの子だった。
でも、涙1つ流さず、変わりに怖いと評判の神戸くんと張り合っていたからだ。



その子をみて、はじめて勝てるかもしれない。…そう思った。

私があの子の立場だったら、その場から逃げて、きっと人目のつかないところで泣いてしまうだろう。



あの子は、身も心も強いのだと、勝てる希望があるのだと、そう教えてくれたような気がした。





.