桜が完全に咲いた。春先の風を受け花びらがヒラヒラ舞っている。
咲き誇る桜の木の下に彼女が立っていた。
僕に早く早くと言わんばかりに手招きしている。
少し駆け足で彼女の所に行く。
隣へ並び、風と共に彼女の髪が揺れる。
彼女は僕の方へ向き笑って「また来年も見ようね!」と言った。
僕は桜が咲く頃には彼女が居ないと思っていた。
しかし彼女は今こうして満開の桜を見る事が出来た。
つい泣きそうになるが堪えて笑顔を作った。

「あぁ…絶対一緒に見よう!」

僕が彼女と満開の桜を見る事が出来たのは奇跡としか思えない。
彼女にとっての最後の願いだったのかもしれない。


二人はいつまでも満開の桜を寄り添って見ていた。