嫌な予感はしていた。
ある日のお昼、美樹と食堂に向かう小道
「あれ、恭平くんじゃない?」
美樹の指差す方を見るとたしかに恭平だった。
最近忙しくて中々時間が合わないから会えるのが嬉しくて
「ちょっと行ってきていい?」
「わかった。先に食堂行ってるね」
美樹には先に食堂に行ってもらって
あたしは恭平を驚かそうと静かに近づいた。
近づいたときに気づいた。
恭平はひとりではなかった。
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木で隠れて見えなかったみたいで
女の子と恭平が楽しそうに話している。
話しかけない方がいい?
恭平は優しいから誰にでも笑って話す。
そんなことわかってたけど
イライラしちゃう。
やっぱ話しかけよう!
「きょ……」
恭平達の目の前に出ようと思ったとき
あたしは声が出なくなった。
2人はキスしていた。
自分の目を疑った。
が
「っ!久美子…」
恭平の驚いた顔を見たらそれは確信に変わった。
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「何してるの?」
何をしてたなんかわかってた。
「あ、ごめん…」
それはなんのごめん?
浮気してごめん?
別れたいのごめん?
いつのまにか女の子はいなくなっていて
泣きそうな顔をしてる恭平。
泣きたいのは自分だった。
「何してたの?」
どうしても恭平の口から聞きたかった。
「ごめん。出来心で…」
出来心?
「久美子のことは今でもすごい好きなんだ!時間が合わなくて寂しくて」
何言ってんの?
時間を合わせなかったのは恭平じゃない。
「久美子…ごめん。もうこんなことはしないよ…」
ギュッと両手を握られた。
あたしはゆっくりと口を開いた。
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「恭平…」
「久美子!本当にごめん!許して欲しい!」
頭を下げ続ける恭平。
「顔あげて?」
そう言うと恭平は恐る恐る顔をあげてあたしを見つめた。
あたしはニコッと笑った。
「別れよ」
同じ大学でも学部が違うだけでこんなにも会わなくて
女の子がいっぱいのとこで
恭平をあたしは信じていける?
「もう、終わりにしよう」
大好きだった彼が元カレに変わった瞬間。
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「っ……」
パチっと目を開ける。
太陽の光が差し込む部屋
汗が頬を伝う。
久しぶりに見た、別れるときの夢。
ゆっくりと起き上がりカーテンを開ける。
丁度今くらいだった。
日差しが強い真夏日。
あれからもう1年経った。
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時々見る別れる時の夢
恭平のこと
そう簡単には忘れられなかった。
だって初めての彼氏だったから……
初めて告白して初めてキスをして……
全部初めては恭平と。
長く付き合ってたし、家族みたいな存在。
別れた時は毎日泣いて後悔して
けど、変なプライドがあって戻ることはなかった。
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