「希咲ー!起きなさい!今日は雄飛くんが帰ってくる日でしょー?お迎え行かなくていいのー?」
「もうっ、わかってるー」

私はベッドから這い出し時計を見て目を疑った。

「うわっっ!ちょっと信じらんない!9時に起こしてって言ったじゃん!」
「起こしても起きなかったのあんたでしょ?」
「起きてないならそれは起こしたって言わないの!」

文句を言いながら私はドタバタと着替えを済ませ家を飛び出した。

「もぉ~、なんで起こしてくんないかなぁ…」

私はブツブツと文句を言いながら真夏の太陽がジリジリと照りつける快晴の空の下、自転車を飛ばし港へ急いだ。

キキーッ!

「ふぅー、あっつー…あ、おじさん今日の船まだ来てない?」
「希咲ちゃんおはよう、船はあと5分ぐらいで着くはずだよ」
「よかった、間に合ったー」
「誰かと待ち合わせかい?」
「うんっ!今日雄ちゃんが帰ってくるんだ!」
「雄ちゃんって、雄飛くんかい?」
「そうだよ♪東京から帰ってくるの」
「そうかぁ、よかったなぁ」
「うんっ!あ、そういやおばさんの体調どう?良くなった?」
「いや…」
「そっか…」

健介おじさんと仁美おばさんは夫婦で漁師をやっている。
でも最近おばさんは体調を崩していてずっと家にいる。
私も小さい頃はよくおじさんたちの船に乗せてもらい漁について行っていた。

「船来たよ」

おじさんの言葉に私はハッと顔を上げて海を見た。
一艘の船がだんだんとこちらに近づいてくる。
私は8年ぶりの幼なじみとの再会に胸を高鳴らせながら船が着くのを待った。
船が到着し、私は雄ちゃんの姿を探した。

小柄で細い男の子、小柄で細い男の子―

「希咲ちゃんっ!」

私が声のした方を見ると背が高くスラッとした男の子が満面の笑みを浮かべ手を振っていた。

「雄…ちゃん?」