___ガラッ




「先生、頭痛いのでベット使っていいですか?」




保健室…なんて、初めて来た。

仮病を使うのも、初めてだ。




ごめん…。
ごめん……スミレ。




今は…話したくないよ。
こんなにも醜い私と、逢わないでほしい。





「井本…桜羅さん?」

「はい」

「隣で寝ている人がいるから、井本さんは右のベット使ってね」

「はい…」





小さく返事をして、ベットに横たわる。




怖いくらい白いこの空間。

……ごちゃごちゃに混乱している私の心を、整理してくれるような色。





「井本さん、香月くん、ちょっと出張行ってくるわね」





先生は1言だけ言うと、そそくさと保健室を後にした。




涙が頬を何度も伝う。



乾いたと思った涙の跡を、追うように……

また冷たい涙が、流れるんだ。





今…すぐに

今すぐあなたに、この胸いっぱいの想いを伝えてしまいたいよ。





けど、伝えたら終わっちゃう。


そう考えただけでも、怖いから……。






「…なんで、遥翔なんだろう」






なんで…よりによって、そういう人を好きになったんだろう。



私を好きになってくれる人を、好きになればよかった。





……こんなこと言っても、もう遅いのに。




もう、好きになってしまったから


こんなにも、心が震えるくらい


好きになってしまったから……戻れない、後になんか引けるわけがない。






そう、頭では説明がつく。




けど体がついてかない。



……行動に移そうとしない私が、たくさんいる。






それはやっぱり、怖いから。




あの優しい笑顔も


温かい言葉も向けてもらえなくなると思だけで、怖い。






私…弱いなぁ……。