唯の後姿が見えなくなってくる。
雨脚はだんだんと激しさを増し、涙か雨かもう分からない。
「桜羅…」
唯の姿がすっかり公園から消え、美羽がベンチまで走ってきた。
「美羽…私ね、失恋しちゃった」
弱気な私はハハッと乾いた笑いを飛ばし、眉をさげる。
今さら強がれない。だって私は、逃げてしまったのだから……。
「バカ桜羅!!」
「え…」
突然美羽に怒鳴られて、体が凍りついたように動かなくなった。
美羽の目にも、雨ではない雫が溜まっている。
「ケータイ電源切ってるし、家にも帰ってないし!おまけにこんなびしょ濡れになって泣いてるし!!……ちょっとは私を頼ってよ」
そっと冷たい体を抱き締めてくれた優しい美羽に、今まで頑なに閉ざしていたなにかが開き、溢れ出した。
「ごめ…っ、うぅ…美羽、ごめん……っ」
「唯先輩が教えてくれなかったら私…!桜羅がこんなに辛い時に傍にいられなくなっちゃうとこだった……っ!!」
やっぱり唯だったんだ。
目の前で友達が、美羽が泣いてる。
私の腕を強く揺さぶって、なにかを訴えかけるかの様に。
「ねぇ、なにがあったのか教えて?…桜羅、1人で悩むことなんてないんだよ」
美羽の優しい声、言葉に私の体は震えた。
まるで〝限界だ〟と、叫ぶかのように。