「…来たな」




唯の声に、ゆっくり顔を上げる。





誰……?


向こうから誰かが走ってくる。





「じゃあ俺もう行くから」




そう言って唯は立ち上がる。




「友達になら、全部話せるだろ。アンタ今辛そうだから、相談に乗ってもらえばいい。」





だんだん近づく影。




美羽だ…。


唯が呼んでくれたの?





「アンタには笑顔が似合ってる」

「…っ!!」





唯は、微笑んだ。








笑顔のほうが似合ってる。





そう言われたのに、その矢先、また泣いてしまった。





だって…嬉しかったから。


素直に、唯がそう言ってくれて嬉しかったから。





「言っとくけど、傘あげたわけじゃないから。返せよ?」

「分かってるよ」




唯は私に傘を握らせると、制服の下に着ていたパーカーのフードをかぶった。




「唯…っ!ありがとう…!!」






去ろうとする唯の華奢な背中に、私は叫んだ。




唯の足は1度動きを止めると、またすぐに進みだした。



唯と美羽が入れ違うように、公園の低い柵を乗り越えた。






唯……



いつも私が辛い時、気づけばそこにいてくれる。






とてもとても、不思議な人____。