だから
あの日


海で 
信長様は


切なそうに 
言ったのだ。



「信じてくれは 
せぬか?」


「この心は 
何があろうと


そなただけのもの」





わたしは


この時代の女の人みたいに

強くない



愛する人には
私だけを



私だけの 
想い人であってほしい



泣きながら 
土間に座り込んだ菊には

その後の平手の話は


何一つ 
耳に届かなかった。