――参ったなぁ………。

俺は目の前の光景から逃げ出したい気持ちで俯いたままじっとしていた。

前と両サイドに隙間無く女性社員がズラリと並んで座り込み俺は目のやり場に困る。

千歳はきっとカンカンだ。
俺を助けに来る気配もない。

彼女と思いがけず恋人になり、はや三週間。

二年間もの片想いから脱する日が来るだなんて、想像すらしなかったのに。


――『沢森さん?!何してるんですか!!こんなところで寝ちゃ駄目ですよ』

――あの日。

横になりたい、と彼女は突然床に寝転んだ。
ホテルのラウンジで飲み直していた時だった。

彼女を家まで送ろうと住所を訊ねると彼女は平然とした様子で言った。


『ここのホテルの部屋を取りなさいよ。
あんたも一緒に来るんだよ』

彼女はムクッと半身を起こすと半分すわった目で俺をキラッと見た。


『ええっ?!だ、駄目ですよ!
二人で泊まったりしたら……』

『……ビビってんの?
あんた、まさかホモじゃないわよね?』

『なっ!何でそうなるんですか』

『……明日の新聞に私が出たらどうする…?
"恋人に捨てられた女性がホテルで自殺"』

『………!!』