「……眼鏡…、ズレてるよ」

私は冷たく彼を見ながら一言呟いた。

「…あ。……ああ。すみません」

クッとフレームを上げながら彼は恥ずかしそうに私から目を逸らした。


全く…。馴れ馴れしく近付いてほしくないわ。

しかも今は傷心を必死で隠しているんだから。

私がフラれてあんな能天気なケバ女に靖夫を奪われただなんて、みっともなくて言えやしないわよ。

「…珍しく…って、どういう意味よ」

「あ…別にそんなに深く意味がある訳じゃないですよ。
ただ、…沢森さん、元気がないから」