私はそっと立ち上がり、どうしたらよいか分からない、という顔でこちらを見ている靖夫に一歩近付いた。
「………靖夫…」
ギロリと顔を上げて睨み付ける。
「…千歳…」
そのまま手を硬く握り締めると、飛び掛かるように靖夫を殴り付ける…!
ドカッ!
「うぁ……っ!」
今度は靖夫が倒れ落ちる。
手がジンジンと痛む。
それを軽く振りながら倒れた彼を見下ろした。
「…いっ………」
恐怖に怯えた視線で私を見上げる靖夫に言う。
「殴る価値もない男だけど、こうして手を痛めてやったのは……、藤崎のためよ。
私の気持ちはとっくにあんたから離れてるの。
バイ、お幸せに。
浮気オトコさん」