ドカッ!


靖夫が藤崎の頬を殴った。
これもまた、一瞬の出来事だった。

「藤崎!」

私は彼に飛び寄った。

「大丈夫?!」

頬を押さえて倒れ込んでいた彼はゆっくりと顔を上げた。

「!!」

口の端から血が滲んで腫れている。

片手を掴まれているとはいえ、至近距離でまともに喰らえばこうなるだろう。

「藤崎…!」

彼はフッと笑うと、「大丈夫です」と言った。