パシッ!

一瞬の出来事だった。

ギュッと閉じていた目をそっと開く。
……痛く…ない?

目の前にあった光景は…。
私を殴ろうと振り上げた靖夫の手を…止めるように掴む藤崎の姿だった。
走って来たのか、彼のサラサラした前髪がふわふわと揺れている。
私はそんな藤崎をボケッと見た。


「………え…」


「な…何だ、お前…!
離せよ……!!」


ざわつきが一気に強まる。
私をかばったのが、あの、藤崎だなんてみんな府に落ちないのだろう。

さっきまでの私なら靖夫と共に彼を責めたかも知れない。
『何であんたが出てくるのよ』ってね。