「千歳は…素直じゃないから。
俺が側にいて、いつも見張っていないとすぐに泣いちゃうんだ」

「………」


……違うでしょ。
あんたを見張っているのが私なのよ。

「…今の千歳に、俺が必要ないならこのまま帰るよ」

「……麻衣子はどうしたの」

「麻衣子さん?ああ、タクシーで帰ったよ。
…あ、伝言。
『試すなら上手くやれ。巻き込むな』…って。
意味は分からないけど」

「………」


…お見通しか。
血は争えないわね…。


「じゃあ。
伝言も伝えたし俺は帰るね。
顔色がやっぱり少し悪いから早く寝なよ?」

勇気は私の頬を指先でぷにぷにと軽くつつくとエレベーターの方向へと向きを変えた。