もう、帰ろう。
…勇気を連れて。
そしてまた、欲望のままに彼に抱いてもらおう。
彼が私の思い通りに、言いなりになる、ベッドの上で。
仕方がないわ。もう、これしかない。
物足りなさの補てんはベッドでしてもらう。
早く…今すぐに、彼を私だけのものにしたい。
私はそう思い、テーブルへと戻った。
「あ、来た来た。千歳。
あんた、少し気分が悪いんじゃないの?
顔色が悪いしあまり話さないし」
「え」
麻衣子が言い出した事の意味が分からない。
「これは、提案なんだけどさ、
あんた…帰ったら?」
「え」
「私は藤崎さんと出掛けるわ。
あんたは帰りなさいよ」
「何?どういう…」
「今ね、彼と話してたの。
具合の悪い人をつれ回す訳にいかないわね、って。
ね、藤崎さん」
私は勇気を見た。
彼は私と目が合った瞬間に俯いて視線を逸らした。