――「はぁい、千歳。
久し振りじゃない?
珍しいわね〜仕事終わりに私を呼び出すなんて。
あんたはいつもビールまっしぐらでしょ」
会社の側のイタリアンレストランに麻衣子を呼び出して私と勇気は彼女を待っていた。
「やめてよ、私にそんなオヤジみたいなイメージを持つのは」
私が彼女に返事をしている短い時間に、麻衣子の視線はすでに勇気へと向けられていた。
「……彼氏?
……あ、……沢森 麻衣子です」
簡単に名前を言いながら麻衣子の頬はもはや赤らみ始めている。
勇気は静かに立ち上がるとスッと片手を麻衣子に差し出しニコッと笑った。
「藤崎 勇気です。
よろしくお願いします」
「……こちらこそ…」
手を握り返しながらも麻衣子はポーッとした様子で勇気を見つめていた。
……やっぱり。
…ストライクだったみたいね。
私は心の中でチッと舌打ちをしながらも、何でもないような顔で言った。
「……いい男でしょ」
麻衣子はハッと我に返り、慌てて握っていた手をパッと離した。