一向は静けさの中、テント(ライの)を張り、野営していた


魔導師達とライは交代で外の見張り


テントの中、ぐっすり眠るターナとは反対にマリアは眠れずにいた


ーーー少し夜風にあたりましょうかーーー


出来るだけ音をたてず、静かにテントを出る


焚き火の前に足を立て座るライと目が合う


ライはマリアを一瞥しただけで再び焚き火を眺める


「どうかしたのか?」


「あ、いえ…あの…」


護衛対象である自分が歩きまわっては迷惑だと思い、どもる


「いや、責めている訳じゃない。眠れないんだろ?」


「えっ…?」


「今日、ずっと悲しそうな表情だった。あんな事があれば無理ないだろう」


そんな分かりやすい顔をしていただろうかと顔に手をやるマリア


ーーーターナにも気付かれなかったのにーーー


ターナがマリアの侍女を務めて3年


2人の関係は主従というより友人に近い


そのターナも気付けなかった事を今日初めて会った異性に読まれた事に驚いた


「他人に話すだけでも少しは楽になる…今魔導師達はいない。無理に虚勢を張らなくてもいいんだ」


マリアは頬に何かが伝う感触を感じた


「あっ…」


泣いていた


王になると決意した日から不安でも、アーサーが死んでも、流さなかった涙


一度気付けば止まらなかった


「辛かったな…」


立ち上がり、マリアの頭を撫でた


マリアはまだ16歳の少女


どれほどの思いが小さな肩にのっているかなど、ライには計り知れない


マリアの小さな嗚咽は静かな森に響き、彼女は泣き続けた