きりりとした美貌。

だけど心は凄く熱い。


嫉妬に…恋する久遠じゃなく、恋敵であるあたしに熱烈ちゅうをぶちかます、…捉えどころのないのが余計にミステリアスさを強める。


あの熱烈ちゅうを久遠にしたら、もうアダルトな世界だね。

本来、あのちゅうは久遠へのものだったんだし。

過去何度も久遠の濡れ場に遭遇したあたしは、久遠に跨っていた…へのへのもへじの女の顔を凛ちゃんにして、ぽわんと想像してしまった。

ああ、嫌だわ。

これなら変態ワンコと同じレベルだ。


「せり。未経験者の癖に、脳に蛆が湧いたような気持ち悪い妄想をしようとするな。何だその間の抜けた顔は!!」


ふふふ、久遠照れてる、照れてる。


「せり!!! 由香の"腐"が感染したのか!!?」


怒ったフリして、久遠は案外可愛いなあ。


「凛…お前のせいだぞ!!! せりが現実逃避してるのは!! お前外界で何をしてきたんだよ!!! どうしてお前の暴走でせりが壊れるんだよ!!! 刺激するなって言ったじゃないか!! 何で此処まで壊すんだよ!!」


ふふふ、そんな焦ってこそこそ凛ちゃんに耳打ちして聞こえないようにしても…あたし判ってるから。

どうせ凛ちゃんに身の潔白を証明してるんでしょ? あたしとは関係ないとか…。

結構久遠…ぞっこんなんだ。

ふふふふふ。


「見ろよ、あの"腐腐腐腐腐"って笑い!! 何でオレがお前なんかと!! …は!!? お前の切羽詰った事情なんてオレが知るか!!」


「せりかちゃん…久遠さまとりんりんって仲がいいね」

旭くんが、そっとあたしの横に立った。

「そうだね。きっと将来…りんりんさまって言うことになるよ。今から練習しておかないといけないかもね」


ふふふふふ。


「りんりんさま…?」


旭くんがぼそりと呟くと、凛ちゃんが睨みつけるような顔で旭くんを見た。

美人はどんな顔をしても美人でいい。

久遠とお似合いだ。


ふふふふふ。


その時、久遠がぱんぱんと手を叩いた。


「戯言はおしまいだ!!!」


嫌だな、久遠。

今更そんな凄んだ顔で隠そうとしなくても、あたしもう判ってるだし。


「………。せり。それ以上壊れるなら、この地のクラウン王子を全て惨殺する」


あたしは、きりりと顔を戻した。

クラウン王子を守らねば。