「旭、もう1つ聞く」


久遠は尋問するように旭に言った。


「お前…この武器を何処から手に入れた?」


それは…地面に散らばったままの制裁者(アリス)のナイフ。

柄には薔薇の模様が刻まれている。


一応鏡を通して見てみたけれど、同じ武器は武器。

幻に消え去るものではなかったらしい。


旭くんは…静かに首を横に振った。


「知らない。旭は…そんな武器使わない。それにもし武器を投げるなら、旭…王子様の格好はやめる。投げにくいもの」


そう、旭が指差した抜け殻の王子様。

何だか哀愁漂うけれど。


ふと思った。


ヘリの中のクマは、作業しにくいと言って、手足をちょん切る非道なことをした。


だけど今此処に居る王子は…

…手足はふかふか王子様。


ひっくり返しても何しても、

負傷した気配はない。


「あのクマが着ていたのは…これとは別物か。

別物なのに本物? ワケ判んない。久遠は判った?」


久遠が溜息をつきながら、髪を掻き上げた。

目は鋭いものの、顔つきはだるだるだ。


「そういうことは、考えるしか能が無い凛に聞け」


え? そこ…凛ちゃんに振るトコ?

というか、凛ちゃん喋れないんじゃ?

凛ちゃんはすごく嫌な顔をして、久遠を睨んでいたけれど。


ふふふ。

仲かがいいね。


久遠の美貌にふらつかないなんて凛ちゃん凄いし。

やる気がないだるだる久遠のお尻をぺちぺち叩いて導いてくれそうな…蓮に通じる系統だし。

久遠と一緒に戦える女性だし。

守られてばかりのあたしとは大違いだ。