「旭。クラウン王子のこの被り物は、どうやって手に入れた?」


不意に久遠がそう問うた。

そうだ。


これはクマが先刻まで着ていたもので。


「レイくんに"しちゅ~"作った後…クラウン王子が外でふらふらしてて。

危ないから…お屋敷につれて行ったの。それでこれ貰ったの」


クマだ!!!


「じゃ、ぐらぐら地震後、旭くんと会って無事に避難できたんだ!!! よかっ「せりかちゃん。旭が会ったのは、"ぐらぐら"の前だよ? 旭、"ぐらぐら"中は、王子様のまま、魔方陣の近くにいたの」


……ん?


「……待て」


あたしが疑問に思うのと、久遠が声をかけたのが同時だった。


「オレ達がクラウン王子をヘリの中で見たのは、地震直前。それより前に屋敷にいるのは、時系列的にありえない」


「どっちかが偽物…?」


ヘリの中にいたクマか。

それとも…屋敷にいるクマか。


「なあ…せり」


久遠が紅紫色の瞳を向けてくる。


「あれは本当に…君の知る"クマ"だったのか?」

「え?」


「君があのクラウン王子を"クマ"と断定したのは、笑い方と喋り方と"ふさふさ"だろう? オレ達は…顔を見た訳じゃない」


確かにそうだけれど。


「あれがクマじゃなかったら、誰!!?」


「……。ただ、あのクラウン王子の被りものは本物だった。そしてこれも本物。クラウン王子自体は本物だが、中のモノが不審だった」


ああ、久遠は…クマをとことん疑っていたんだっけな。