地に下ろした旭くんの、顔から出る全ての"汁"を拭き取ったあたし。


昔から、こうした子供の面倒を見るのは好きだ。

あたしには妹弟もいないのに、何でか判らないけれど…自分でも慣れていると思う。


「はい、旭くん。綺麗なお顔になったよ。もう泣いたら駄目だからね」


「ありがとう…せりかちゃん。

きゃははははは!!!」


きゃはははが戻ってくれると嬉しくて堪らない。

やっぱり旭くんはこうでなくっちゃ。


間中――

凜ちゃんの…突き刺すような熱い視線を感じていた。


詰るような漆黒の瞳。


言いたいことを言えないそんなもどかしさが伝わってくる。


よし。


後で、ゆっくり話してみよう。


筆談でもいい。

あたしと久遠は何でもないって誤解を解こう。


凜ちゃんはお友達がいないと言っていた。


あたしがきっと凜ちゃんにとって初めての友達だ。


恋をしている凜ちゃんは、抱える心をどう表現すればいいのか判らず、衝動的な嫉妬故にあたしにあんな奇行をしでかしてしまったんだ。


きっと恋するオトメは、情緒不安定。


あたしはそれを広い心で受入れた上で、精一杯相談にのってあげようじゃないか。


あたしだって恋愛初心者だけれど、ガールズトークをしてみよう。

由香ちゃんも交えれば、文殊の知恵にもなりそうだし。