かつての"約束の地(カナン)"において…
死んだ月(ユエ)ちゃんを模倣し、
月ちゃんとして生きることを決心した旭くん。
月ちゃんの最期は、
今でも思い出したくない。
あたし達を逃がす為に、
狂信者の手により残虐に殺された。
あたし達は、助けることが出来なかった。
「月の唯一残った頭蓋骨は…魔方陣の傍に置いていたはずだ」
久遠は抑揚のない声で言った。
月ちゃんの骨…
残っていたんだね。
彼らを生かす魔方陣。
その身が滅んだ月ちゃんは、蘇生は叶わなかったけれど、せめて魂だけでも生き続けていて欲しい。
多分…そういうことだろう。
その願いを"祀り"に託したのは、久遠なんだろうか。
「月の骨が手元にあるということは…魔方陣に誰かが入ったのか? オレの…厳重な術が掛けられているあの空間に」
旭くんは泣きじゃくっている。
凜ちゃんは、優しく優しく旭くんの背中を叩き続けている。
あたしは…その仕草に既視感(デジャブ)を感じた。
「…司狼といたら…
突然声が聞こえたの…」
旭が言った。
「望みを叶えて上げるって…」
旭くんは嗚咽を繰り返した。
「だからね、だから…
旭は望んだの…。
月が…生き返って欲しいって」
そしてぎゅうっと骨を抱きしめた。